2020年5月、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、逼迫する医療現場の状況が度々報道されていました。この時、フローレンスの保育現場、訪問看護の現場でも、試行錯誤の状況にありました。
障害児訪問保育アニー(以下アニー)は緊急事態宣言が発令されている間、各自治体からの要請に応じて、一部保育が必要なご家庭を除き、保護者への登園自粛をお願いしたり、臨時休園にしていました。
保育を続けたいけれど、続けられない。子どもたちや親御さんは元気にしているのだろうか
そんな中、アニーは日頃から連携して活動している、フローレンスの訪問看護ステーション ジャンヌ(以下ジャンヌ)とより密に連携することで、必要なご家庭に保育を続ける「応急保育」というやり方で、緊急事態宣言期間を乗り越えました。
アニーの保育を支える看護師集団“ジャンヌ”とは?
ご自宅で保育をするアニーでは、日頃から保育スタッフだけでなく、看護師もお子さんの自宅を定期的に訪問し、健康状態を医療的な目線から見守っています。その看護師たちが所属するチームがジャンヌです。
看護師は健康管理や医療的なケアの提供だけではなく、訪問する時間に合わせてそのときに行われる遊びや活動にも積極的に参加します。日頃からアニーチームの一員として継続的にお子さんたちと関わりを持っているため、一人ひとりのことを良く知っている看護師たちであり、お子さんたちにとってが、慣れ親しんだ「いつもきてくれる看護師さん」なのです。
新型コロナが猛威をふるい始めた頃の看護師たちの思い
新型コロナウィルス感染症の拡大により人々の不安が広がる中、看護師である私たちに何ができるのか?休園に伴い訪問看護も休止するべきなのか?それとも訪問を続けるのか。
新型コロナウィルス感染症の拡大当初、私たちジャンヌのチームは話し合いを重ねました。
もし新型コロナウィルスに感染したら、基礎疾患のあるお子さんたちは、重症化するかもしれないという不安がありました。しかし、保育のみならず、訪問看護も休止するとお子さんと保護者が孤立してしまうのではないか?と考え、「ご家庭を訪問し少しでもサポートをしたい」という看護師たちの思いから訪問看護の継続を決めました。
まず気をつけたことは、「お子さんたちはもちろん、私たちが感染しないこと」でした。訪問看護における方針と対策を早期に作成し、スタッフ向けの感染対策ガイドを作成しました。このガイドに基づいて保育再開時の具体的な対策についても検討しました。
(写真)ビデオ通話で顔を合わせる担任の先生とお子さん
情報が乏しい中ガイドラインを早期に作成
ジャンヌでは、東京都での感染拡大を想定して2月末頃から対策について考えていました。まだこの時は危機感はそこまでなかったのですが、あらゆる想定をしていました。
感染対策に関するガイドラインは主に病院向けに作られたものがほんどで、特に訪問看護・保育に関するものは乏しい状態でした。そのため、早期に「アニーでの対策」について検討し、看護師が有志で感染対策の基本、訪問時の具体策などを考え「アニー版感染対策ガイド」を作成しました。後に「訪問看護事業所向け対応ガイド」というものが公開されたため、それを参考に情報をアップデートしながら、地域における感染状況にあわせて対応を続けました。
状況は刻々と変わり、医療物資は病院でも不足するようになり、訪問看護ステーションでは更に入手困難な状況となりました。ガウンやフェイスシールド、そしてマスクや消毒薬など当たり前のように入手できたものが手に入りません。またあったとしても配られるべき優先順位は病院の方が高く、これがなければ感染予防をしての訪問が難しくなると考え、ジャンヌ、保育スタッフが協力しレインコートでガウンを手作りしたり、透明ファイルなどでフェイスシールド作成しました。手作りであってもお子さんにとって恐怖にならないように工夫したり、なるべく柔らかい素材を使用するなど、お子さんたちやご家族に安心していただけるように試行錯誤し、感染対策を徹底して訪問を続けました。
ジャンヌ看護師は、一部のご家庭に訪問を続ける保育スタッフも安心して保育ができるように、感染対策のマニュアル・質問集・説明動画を作成。今も変わらず、看護師としてできることを日々模索し、安心できる保育環境のサポートを続けています。
※写真はコロナ感染拡大前に撮影したものです
緊急事態宣言に伴い、いつもと違う日々を過ごすお子さんたち、ご家族にとって、「いつも来てくれる看護師さん」の訪問は少しでも安心できる時間となったのではないかと思います。
実際にジャンヌが訪問したご家庭からは、「1日の中で1時間や2時間でも子どもを見てもらうことで自分の時間を作ることができてよかった」という声もあり、ジャンヌの訪問看護が結果的にコロナ禍で精神的に負担が大きくなっていた保護者のレスパイトケアにつながっていたこともわかり、私たちもホッとしています。
また「しっかり吸引をしてもらえて助かった、胸の聴診をしてもらって吸入が必要か判断ができてよかった」という声もありました。
今後も、アニー保育スタッフはジャンヌ看護師と連携をとりながら、安心できる保育の提供を続けていきます。
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